蕎麦酒房 天山

蕎麦職人

井出 健人
いで たけと

川内村の蕎麦屋「天山」の店主にして蕎麦職人。川内村で生まれ育ち、東京の大学に進学するも自ら中退して料理の道へ。会津で修行した後、独立。実家である「小松屋旅館」のそばで蕎麦屋を開業する。研究熱心でハマるととことん追求するタイプ。現在ハマっているのは獅子舞。

#105
井出 健人
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ぶち部屋って呼んでます

ここは蕎麦をぶつための、ぶち部屋です

普通、麺棒は2、3本使うのが主流なんですけど、会津は桐の1本棒で、丸―くのばして、麺棒に生地を巻けて、こう叩いて伸ばすんですよね

だから「打つっていうより、ぶつだな」って師匠は言ってて

私も蕎麦ぶちって言ってますね

ユーズドの獅子舞

2年前から獅子舞始めたんですけど、練習用にこの獅子買いました

はい、ユーズドですね、売ってたんですよ(笑)

この地区に東郷神楽って言って獅子舞があるんですけど、震災後にやる人いなくなっちゃって、「俺やってみたいです」って手挙げたら

師匠が稽古つけてくれて、今一番ハマってますね

午前そば打ち

午後りんご

会津坂下の加藤そば道場ってところで修行しました

そこは農家やりながら蕎麦をつくってるとこで


午前中は蕎麦ぶち教えてもらって

午後からはりんごの葉もぎを手伝って

住み込みでね、朝昼晩はそこのお母さんがつくった

ご飯を食べられる、みたいな感じでした


当時は師匠と私、含めて弟子5、6人いたかな

師匠は修行したらそろそろ独立しろって言ってて

先輩たちも独立してお店やってる方多いです

猪苗代の遊山さんとか、石川町の蕎麦美人さんとか

長距離トラック乗ったっすね

お店やる前に資金貯めようと思って

長距離トラック乗ったんすよ


もう沖縄以外は全部行きました

当時はナビがなくて、会社から電話あって

住所聞いたら「まっぷる」っていう

分厚い地図があって、それ開いて調べて


一週間くらい家に帰らずに

栄養剤飲んだり窓開けたり、色々工夫して

まあ若かったですし、寝なくても走れたっすね

3年ぶりの蕎麦ぶち

会津で蕎麦ぶち修行終わってから

長距離トラック乗ってたから

蕎麦ぶちのブランクが空いてたんですよ


3年くらいかな、親父に

「そろそろぶってみたらどうだ」みてえに言われて

宿のね厨房でぶってみたんです

そしたら楽しかったっすねえ


誰が撮ったんだか知らないですけど

その時の蕎麦ぶってる写真があって

それ見る度に、その時のこと思い出すんす

06:30
起床・身支度
07:00
そば打ち・開店準備 ※朝食は合間(ごはんと納豆)
11:00
昼営業開始
14:00
昼営業終了・片付け ※昼食は合間
15:00
買い出し
16:00
休憩
16:30
開店準備
17:00
夜営業開始
19:30
夜営業終了・片付け ※夕食は合間
20:30
仕込み
22:30
帰宅・入浴
22:30
ノンアルコールビールを飲む
23:30
就寝
ある一日のスケジュール
One day's schedule

川内の地下水と

川内の蕎麦粉でつくる

川内の地下水と

川内の蕎麦粉でつくる

2008年にこのお店を建ててオープンしたんですけど

そうこうしてたら震災あって避難区域になって


東京に避難して設備会社さんのお世話になりました

3年目の時にここに戻ろうか、東京にそのまま居ようか迷ってたら

社長から「東京で蕎麦屋やればいい」って言われたんす


だけど、やっぱり川内の地下水と蕎麦でやるってのは

絶対ブレなかったんすよね、東京で蕎麦屋やろうと思えなくて

2014年に会社辞めて、ここに戻ってきて再開して

徐々にお客さんに来てもらえるようになって

今みてえになったのは、もう本当にここ最近です

川内村のお盆が集合してます

川内村のお盆が集合してます

お店始めた時は本当になんもなくて

こういうお盆はあれですね

川内の人が自宅にあったお盆を持ってきてくれて

「店で使ったらいいよ」なんて言っていただいて


いろんな方からもらったんで家紋が入ってて

これなんかもどういう意味かは分かんないですけど


あとサイズが微妙にほら違うから

ちゃんとね重なんねえ(笑)

だけどありがたいことだなと思って、今もずっと使ってます

小松屋旅館

ゆくゆくは継ぐかなあ

小松屋旅館

ゆくゆくは継ぐかなあ

親父で多分、四代目とかそんなくらいですね

実家はずっと旅館やってんです

自分がガキの頃は、常連さんがいたりして

一緒に宿の囲炉裏で一緒にご飯食べてました


詩人の草野心平さんも何回か泊まりに来たことあって

天山文庫って、草野さんの記念館があんですけど

それにちなんで蕎麦屋を「天山」って名前にしたんです


親父もお袋も旅館は継がなくていいって言いますけど

まあ、ゆくゆくは継ぎたいなって思ってます

元々はね、宿で蕎麦出そうと思って蕎麦屋始めたんで

オリジナルの包丁っすね

会津の蕎麦ぶちは生地自体が大きいですから、大きな包丁がいるんですよ

こんなのつくってるメーカーないですから、オリジナルでつくってもらってます

昔から会津の包丁ってあって、これです、元々は大きなノコギリなんです

用無しになったノコギリの刃の反対側を研いで包丁にしてて、昔の人は凄いんですよ

オリジナルの包丁っすね

こういうのは集めたりもらったり

鉄瓶とかこういうちょっと変わった置物とかは私が探して集めたもので

私がこういうの好きなんすよね

お客さんもそれ知ってて、この馬の置物はお客さんからいただきました

どっかの公園に置いてあった馬らしくて

公園が団地になるから天山さんの入口にでも置いてくださいよっていうことで

こういうのは集めたりもらったり

日常に溶け込むそば屋

これは滝平次郎さんっていう版画家の作品ですね、私好きで

庶民っていうか、我々の生活の一場面を版画にしてやってるのがすごく好きで。なんか特にほら、着飾ったかっこつけた感がなくて、いいんです

うちの蕎麦屋が目指してるのも

高級っていうよりかは、誰でもこられて、食べられる食事みたいなとこを目指したいから

こういうなんて言うんすかね、昔からの庶民の日常の一コマ、みたいなのが好きで飾ってるんです

川内の人たちに

ちょっと「天山」行って蕎麦でも食べるか

みたいに使ってもらうのが一番嬉しくて

こういう絵にあるような、日常に溶け込む蕎麦屋みたいなお店を目指してます

神社への散歩コース

黒柴のメイちゃんです

漢字の命でメイって読みます

いつも店が終わってから、夕方に散歩です

近くに諏訪神社ってあるんですけど

だいたいそこまで行って戻るコースが定番です

諏訪神社はお祭りがあるんですけど

そこでお神楽やるんです

まず神社の前の階段の下から笛吹き始まって、笛吹きながらずーっと階段登っていって、境内に着いたら獅子舞やるんです

ここから見る景色が好きなんですよね

散歩に来て、ちょっとゆっくりして

ちょっと仕事から離れられる時間かもしれないですね

自分の中では大事な時間です

妖艶な蕎麦っていうか

なんて言うんすか、妖艶な感じというか、こうセクシーというか

そういう蕎麦をつくりたいんですよ、ははははは

麺が盛られた時に、うわセクシーだな、みたいな美しい蕎麦

変に無理な力で切ってなくて、自然な感じになってる

そういう麺は自分でもめったにできないんすけどね

得意技はやっぱりメンです

高校時代は部活で剣道やってて、それが楽しかったですね、一番は

まあ剣道ってはたかれるわけですから痛いんですけども

夜帰ってきて、家の前で素振りして、なんて言うんすか

究めていくというか、それがやっぱり楽しかったですね。

得意技ですか?やっぱ面じゃないですか?蕎麦屋ですから、ふふふふ

江戸時代のレシピ本

研究するのが好きで、雑誌とか昔の文献漁ったりしたんすよ

この本は江戸時代のレシピ載ってるんですよ、だけど単位が匁とかだったりしてわからないんですけどね

でも、蕎麦寿司とかも載ってるんですよ、蕎麦に海苔巻いてカットして、中に卵焼き入れてもいいし、エビを茹でたのを入れてみたいな

私は鍼派ですね

蕎麦ぶちはパワーいるんですよ

だから、たまに鍼やりに行くんです

揉みほぐしとかも試したんですけど、私は鍼がいいですね、鍼派です

先輩から40過ぎたらメンテナンスしといた方がいいぞーって言われて

3年前から通い始めて、今は2ヶ月に一回くらいかな


プロフィール

蕎麦酒房 天山

井出 健人(いで たけと)

川内村の蕎麦屋「天山」の店主であり蕎麦職人。

川内村で生まれ育ち、

東京の大学に進学するも自ら中退して料理の道へ。

会津で修行した後に独立。

実家である旅館「小松屋」のそばで蕎麦屋を開業する。

研究熱心でハマるととことん追求するタイプ。

現在ハマっているのは獅子舞。